寝かしつけをするときに、夫がジムに行くわけで
完全にパパっ子と化している息子たちは、生き別れの親子さながらに「行かないで!」と懇願するわけです。
そんな様子を見かねて、私が寝かしつけの時にするのが「お話」
ぴっぴにはこれが新鮮で、お話聞きたさにパパを解放するのであった。
気をひくために、星新一のショートショートで聞いたことがある「穴」の話をしてみた。これが結構ウケて、「ママ、他のお話もして」
それならば古典中の古典、「うらしま太郎」を話そうと話し出したら、結果としてぴっぴが大号泣してしまった。
なんてことはない、ストーリーをそのまま話しているだけなのだけど
「子どもたちが亀をいじめていると…なんと、そこに!」とか言うと「えーっ!何、怖い」と目を隠すぴっぴ
「え、聞きたくない?」「聞きたい」「そこに、うらしま太郎がやってきて子どもたちに『亀をいじめるのはやめなさい』と言ったのでした」
てな具合に、緩急をつけるとその言い方が怖いらしく都度お話が中座するのであった
途中そういったやりとりを経て、いよいよ竜宮城を後にするうらしま太郎。
お姫様に玉手箱をもらうのだけど「絶対に開けてはいけません」と言うわけよ。それに対して「絶対開けない!怖い!!」とぴっぴ。私しゃ話をしていて不思議なのだけど「絶対開けるなって言うんだったらくれなきゃいいのにねぇ」なんて話している。
お姫様の心境といったら、帰ってほしくないけども本人は帰りたいと言うし、現実の世界では数百年経ってガラリと変わってしまったうらしま太郎の世界で絶望すると思って持たせたわけよ、玉手箱を。
なんかさ、もうこの時点でホラーよ
人間さ、「絶対開けちゃダメ」なんて言われて開けない人はいるのだろうか。押すな押すなのギャグじゃないけど、開けたくなるじゃないか。ぴっぴもこの辺りから不穏な空気を感じていて
「なんで?なんでパパもママもいないの」
「竜宮城で遊んでいる間に何百年も経って、パパもママも死んじゃって、知っている人もいなくなっちゃったんだよ」
「死んじゃったの…うわーー(号泣)」
この時点でもうぴっぴはもうお話聞きたくないモードなのである。ところであの玉手箱、どうしたと思う?知りたい?やめる?
「聞きたい」
「開けたら、なんと!」
「怖いー(目隠しするぴっぴ)」
「やめとく?」
「聞きたい」
「中から白い煙が出てきて…シワクチャのおじいさんになってしまいました」
「!!うわーー(号泣)」
桃太郎とかうらしま太郎って、昔話の定番だけど
このうらしま太郎に関していえば救いがないと思わないかい?誰だい、こんな恐ろしい話を子どもに読み聞かせようって語り継いできた親は。最後うらしま太郎も死ぬわけじゃないか。もうホラー以外の何ものでもない
愛が憎しみに変わるお姫様も、遊んでいた間に時が過ぎて取り戻せないという教訓も、そして誰もいなくなった的にみんな死んじゃう結末もホラーであるよ。なんも優しくない。
亀を助けたばっかりに、とんだ迷惑を被ってしまったうらしま太郎なのだった。
そう考えると、アンパンマンのなんて牧歌的な優しい世界観よ。誰も死なないし、誰も悪くない。悪者のバイキンマンでさえ人気がある。
そういえばアンパンマンの世界では金銭のやり取りをみたことがない。みんな富を奪い合うようなこともない。(時々バイキンマンが独り占めしようとするけど)
ボランティアでみんな動いているし生活が成り立っている。
ウサギやクマがしゃべるのはもはやアニメでは当たり前であるが、パンも丼も野菜も命があり当たり前のようにしゃべっている。なんという「多様性」
それなのに、それぞれの登場人物は自分の存在のありようなどに疑問すら持たない。その「違い」を感じさせない優しい世界なのだ
子どもがハマるのもわかるよ。