妊娠中のことを振り返りながらまとめていこうと思う。
つわりもなく、腰痛や抜け毛そういったものには無縁だった私も、妊娠7ヶ月ごろ、「妊娠性痒疹(ようしん)」というのになった。
なんてことはない、ただひたすらかゆいのだ。しかしそれまで肌トラブルとは無縁だった私。
剣道が終われば洗面所の石けんでガシガシ顔を洗っても何もならないし、化粧水も滅多につけない。それがかけばかくほどかゆみの増す肌トラブルへといざなわれた。
産婦人科でいつもの先生に症状を訴える
わたし:「かゆくてかゆくて死にそうなんですどうしたら治りますか?!」
先生:「産めばおさまるんだけどねー」
産めば治るってことか
あと3ヶ月がまんしろと…
一応保湿剤のようなものを処方してもらって、頼みの綱の皮膚科へと急いだ。
皮膚科の先生も妊婦ということでできる限りの処方はしてくれようとしたのだが、婦人科の先生に言われた言葉を伝えると
「あー、まぁしょうがないよねぇ。」
そりゃそうなんだけどさ、なんかないですかね?!
どうしても掻きむしってしまう眠れないかゆみを訴えるとステロイド系の薬をくれた。リンデロンというやつだ。ステロイドか…と難色を示すと
「かゆくて眠れないほうがお腹の子には悪いと思うよ。かゆみがおさまったら使うのをやめて、保湿剤に切り替えてね」
確かにステロイドの怖さに怯えてなにもしなかったら、このかゆみはずっと続く。
かゆくて眠れないしイライラしていかにも体に悪そうだった。先生のこの言葉を聞いていくぶんかホッとした。
しかし薬を塗っても劇的な変化はなく、かゆくてかゆくてイライラして、終いにゃこれが産むまで続くのかつ思うと絶望的になった。
気持ちの浮き沈みの大きいナイーヴな妊婦はついに泣き出す。
かゆみに的確なアドバイスをくれたのはまさかの
ここで思いもよらない力を発揮したのが夫だ。
彼は幼い頃からアトピー性皮膚炎でいわばかゆみのプロ。
私のまき散らすかゆみの訴えに「そうだね、かゆいよね。つらいよね。かわいそうに」と背中をさすってくれるのだ。
例えばかゆみに対する行動にしても、「かいてもいいよ。ただ水シャワーするといくらかすっきりするから汗かいたらかゆいところだけ水シャワーしてみたら?」「保冷剤をあてながら寝ると気持ちいいよ」など、
「かくな!」という一言は言わない。それは散々自分がかゆみに悩まされた故の思いやりとも言える。
そこで初めて私は彼が小さい頃から抱えていたつらさを体感することができた。
かゆみの程度なんて人それぞれで本人の気持ちなんかすべてわかるはずはない。だけど、共感してもらってお互いに思いやるというのは薬以上に効果があると思った。
夏の間中、どこにいくにもボリボリとかいていたかゆみも、ふと気がつくとおさまっていた。
一体何だったんだ…と思うくらいすっきりなくなった。私は運が良かったのだと思う。なくなると都合のいいもので、かゆかったことも子どもみたいに泣いてたことも忘れてしまった。
だからこそ、日記に書き留めておこう。
夫には違う意味で尊敬の眼差しがふえた。あのかゆいのにイライラせず、おだやかに過ごす精神力。他の人の面倒まで見る心の広さ。
冷房の温度設定や、お風呂のお湯の温度設定に日夜バトルを繰り広げていたが、これからは彼の好きな温度にしよう。
だって私は暑かろうが寒かろうがかゆくないんだもの。
一説によると、お腹の子が母親と違う性別だと体が異物だと感じて様々な症状がでるらしい。
わたしはかゆみとの戦いだったが、つわりほどの辛さはなかった。かくして生まれたのは男児であったが、2人目妊娠中にはそのような症状はなかった。
2人の生まれる季節が真逆だったから…?
不思議なものである。