殺伐とする母の病気の現状に反して、我が子には癒やされる。いや、こういう時だからこそ子どもの力というのが身に染みるのだろう。
ぴーすけはいないいないばぁに夢中だ。人がやっているのを喜ぶ段階を超えて、自分でも手で顔を隠していないいないばぁをする。かわええなぁ。
そして、それだけでは飽き足らず、物を使ったいないいないばぁに挑戦している。
私がダイニングテーブルでパソコンをいじってると、ソファの背もたれからひょっこり顔を出して「いないいないばあ」をするのだ。それもちょっと出てきたり、ソファのクッションを生かしてビヨーンと出てきたりバラエティに富んでいる。
いつの間にこんなことができるようになったんだなぁ、と思っていると、こちらも応戦したくなってきた。
ぴーすけがかがんでいる隙に身を隠すのだ。そしていないいないばぁ!と飛び出すとめっちゃウケる。
手を叩いて、キャハキャハされるとこっちのテンションも上がるのだった。
ちょっと意地悪して隠れたままでいると、ソファを降りて私を探しに来る。いないいないばぁからの隠れんぼである。
まぁこれも先日のイスから落ちたのを思うとなかなかこれは危険であるのだが、ちょっと成長したなぁなんて思う一面なのだった。
そんな昼下がり。
ぴーすけがまたもいないいないばぁをしたのは、私が昼食の準備をしている時であった。我が家は対面式のキッチンで、キッチンのカウンターからはダイニングテーブルが見える。カウンターには小さなカフェカーテンがかけており、少し透けて向こう側が見える。
そのカーテン越しに私を見つけては、いないいないばぁをしてくる。なんて可愛いのだろう。
私も負けじと応戦した。キッチンにかがみ込み、勢いをつけてジャンプして飛び出すと、ケラケラ大声でぴーすけが笑った。お、いい感じじゃない?ご飯作りながらぴーすけの相手ができてるぞ。
その様子を見て、今度はぴっぴ(長男)がやってきた。「何やってるのー?」
いつもならぴーすけの大爆笑をさらうのはぴっぴである。そうだ、ぴっぴがこれをやったらめちゃくちゃウケるんじゃないか、そう思ってぴっぴに言った。
「ぴっぴ、ここから思いっきりジャンプしてみて。ここからビヨーンって飛び出すと、ぴーすけめっちゃ笑う」
するとぴっぴがキッチンの中にやって来てジャンプ。残念ながら、ぴっぴのジャンプ力ではキッチンのカウンターに届かなかった。ならば私が持ち上げるか、とぴっぴの後ろから脇に手を伸ばした瞬間、ぴっぴが勢いよく2回目のジャンプ。
私の下顎に、彼の石頭がクラッシュしたのだった。
ごちんという衝撃音と、なんかピヨピヨするようなあの漫画のようなチカチカする感じ。お互いしばらく悶絶である。その日もうちにいた姉ちゃんが、思わず音を聞きつけて何事?!と来るぐらいである。
痛がるぴっぴをみて、「本当ごめん」彼は何も悪くないのだ。ただタイミングが超絶悪かったのだ。お互い。ちゃんと「ちょっと待ってて」って言えばよかったのだ。ほんとごめん、痛てえぇ
頭をなでなでするとしばらくして痛みが治まったのか遊び出したぴっぴとは対照的に、なんだかどんどん痛くなるアゴ。氷で冷やしました。
そんな我らの事故など知るよしもないぴーすけは相変わらずいないいないばぁを仕掛けていた。もはや笑う余裕などない母である。それでもぴーすけを笑わそうとしたこのアゴの痛みは名誉の勲章なのだと言い聞かせる。
次はもっと楽な方法で安全に遊ぼう。