ぴっぴ(息子)が今執心しているのは電車である。
とりわけ、踏み切りをながめるのが好きだ。
引っ越して、保土ヶ谷駅から遠くなってしまったので、踏み切りも遠くなってしまった。
以前のように「じゃ、ふみきり見に行こうか」という気軽な距離ではなくなり
「うぉー見に行くぞ~(ほんとはめんどくさいけどーー)」という心境である。
加えて日に日に厳しくなる寒さ。うっかり軽装で行くとものすごーく寒い思いをする。
今日みたいな暖かい日も、日陰でじっとしてると案外寒いものである。だから、ふみきりを見にいくときは、ダウンを着、布という布をかけ、お尻にオムツ入れを敷いて一緒に見る。ぴっぴはベビーカーだから寒くないわな
ふと、10歳下の妹もこの年のころ意外なものにハマったことを思い出す。ゴミ収集車だ。
かつての我が家は段々になっているマンションの6階だったのだけど、地上階であり、ゴミ集積所が目の前だった。
ゴミやさん、と家族で呼んでいたが
ゴミやさんが来る音楽が聞こえると妹は目を輝かせ、玄関に走っていった。
そしておじさんたちに笑顔を振り撒き、ゴミが飲み込まれる様子を嬉しそうに見ていた。
小学生の私には何がそんなに面白いのか全くわからず、冷めた目で見ていたのを覚えてる。
あまりの喜びようにゴミやさんのおじさんもすっかり妹を覚えて、笑顔で手を降ってくれていた。
我が息子も、他の男子と同様に電車にハマっているわけで、誰もが通る道だと聞いて半ば諦めている。
逆に電車がこれほどまでに好きならば、電車を見せていれば大人しく、母はただ横で
「あれは成田エクスプレスだねー」とか「お、横須賀線がきたよー」とか適当に、邪魔にならない程度に相づちを打ってればよいのだ。
妹も、当然今ではゴミやさんに熱狂するはずもなく、当時のことは全く覚えていない。
ゴミやさんのおじさんがあまりに妹が喜ぶものだからくれた『ゴミやさんの音楽』のカセットももはや思いでの遺産である。(クレイジーケンバンドじゃないほう)
でも彼女にとって大事なのは音楽ではなく、おじさんがゴミを素早く拾い上げ、ゴミを収集する様子だったということは今の私にはわかる。
ぴっぴもただ電車ではなく、踏み切りの棒が上げ下げする様子が好きなのだ。
正直成田エクスプレスだろーと、東海線だろーとなんでもいい気がする。
もしかしたら、親が適切なタイミングで興味のあるものを与えてやれば、将来それがなんらかのやりたいことにつながるのかもしれない。
そんなことを思いながら電車を眺める。
ねぇぴっぴもう帰ろうよ。